社労士と行政書士のダブル受験体験記

2023年に合格を目指すブログです。

★★★★★ハゲタカ上 真山仁

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ハゲタカ上 真山仁


綾野剛主演のドラマから原作へ入る。ニューヨークの元ピアニストである主人公、鷲津雅彦はとあることから投資ファンドの世界へと身を投じ、わずか数年で社長に登りつめて企業買収のプロとなる。第一巻では沢尻エリカ演じるミカドホテル社長、松平貴子をめぐる買収劇が始まった。

人をあざ笑うかのような態度を取ることもあれば、人にすり寄って心の隙間にうまく入り込むのが非常に上手く、そして自分に絶対の自信を持っているところに憧れます。それはもちろん、情報収集に抜かりがなく、どういう戦略戦術で相手を攻略するかが明確になっているという裏付けがあってこそで、まさに「段取り八割」という格言を実行しているのだと感じました。

 

(印象に残ったシーンダイジェスト)

熱海国際観光の金田という社長が突然、「助けてほしい」と鷲津の会社を訪ねてきた。それまで鷲津の会社ホライズン・ジャパンが債権の買い取りを要請していたにもかかわらず、再三にわたり回答をもらえていなかった。そこで他の買取先を探していたところ、別な会社が見つかって債権の売却が完了していたのだった。それを聞きつけてやってきたのだったが、社内での不祥事も重なってやつれた状態だった。

金田:あんた達、世間ではハイエナだ、ハゲタカだって言われているそうだな

鷲津:そうおっしゃる人達もいるようですね

金田:一体わしらの債権をいくらで日信銀から買い受けたんだ

鷲津:お言葉を返すようですが、金田さん。ではおたくが経営されている「富士見原カントリークラブ」は会員権募集でいくらのお金を集められ、実際の建設費にいくらお使いになられました?

金田:何だと!

鷲津は、そこで微笑んだ。

 

クレーム対応ですが、こういったやり取りが見事だなと感じます。後から考えれば分かることをその現場で伝える「対応の瞬発力」を自分も身につけたいと思います。

 

第一部 バルクセール 第一章 福袋より

後にターンアラウンドマネージャーとして活躍する三葉銀行の芝野健夫が鷲津のディールを「見事なものだ…」と評価する場面があるのですが、何が凄かったのか3つポイントを挙げてみます。

 

1 相手を惹き付けるストーリー

ハゲタカと揶揄されることもありますが、彼らのビジネスの本質は、再生可能な企業や不動産などの経営資源などを安く買い取って価値を高めた上で利益を出すことにあります。今回の交渉では三葉銀行の債権をバルクセール(まとめ買い)という形で取得するところから始まりました。

三葉銀行としては都合の悪い債権も含めて何とか手放したいと考えており、できれば高く売りたいという思惑がありました。しかし、その考えをうまくあしらいながらも、相手に不快感を与えずに納得させてしまう話の展開は学ぶところが多いです。

 

2 緻密な情報収集

ストーリーの裏付けとなるデータや情報を集めることに関して鷲津の右に出るものはいません。元CIAのビジネスパートナーのサムを右腕に持ち、相手の弱味となる核心的な情報を握る展開にたまらなく惹き付けられます。そしてそのカードをどのタイミングで切るのか、1のストーリーテリングと合わせてこの作品の真骨頂とも言える部分かと思います。

 

3 相手を立てるも、自分たちの欲求を通す

ストーリーの帰結と言える部分ですが、今回の話で言えば債権の9%が相場ですよということを様々な角度から説明して相手を納得させた上で、最後に鷲津は10%で債権を買い取ることを提案し、それに対して芝野は「見事なものだ…」と反応します。

1%相手に譲歩することで恩を売ったわけです。もしかしたら本当は10%が相場だったかもしれませんが、こういうストーリーにされると相手も感謝することになります。後に芝野は鷲津のことを「人の心をつかむ天才」と評するようになりますが、これが最初の出会いとなりました。