★★★★★陸王 池井戸潤
行田の古代蓮会館のタワーから田んぼアートが見られるのですが(今年は中止)、そこで役所広司の「陸王」を見たのが最初でした。竹内涼真がランナー役で出ていたのを覚えています。
才能はあるけど目が出ない若者をフィーチャーするのがこの池井戸作品の神髄のように思います。同様に技術力はあるものの、衰退産業と呼ばれる「足袋(たび)」を作るこはぜ屋とが出会ってランニングシューズを作るという話なのですが、この作品によって人とのつながりを改めて意識させられました。
銀行の担当者からスポーツショップの店員を紹介され、ランニングシューズの開発に取り掛かる。同じように紹介を受けてシューズのソールの特許を持つ男と出会い、ともに血と汗と涙を流しながら満足いくシューズを作り上げる。大手シューズメーカーを退職させられた男とスポーツショップで偶然出会い、シューズへの思いを共感してプロのランナーにシューズを履いてもらう機会を得る。
どれも1人では為し得ない偉業であり、周りの協力が得られたからこそ為し得たのだと思いましたが、そこには「いいシューズを作りたい」という強い思いがあったのでしょう。だからこそそこに人や技術が集まり、最高のシューズを作り上げた。
資金繰りに苦悩してシューズをあきらめかけるシーンもありましたが、「できれば」ではなく「何としても」に思いが変わったときに突破口が開けました。信念を持って仕事に対して向き合うことで道が開けるのだと感じました。