★★★★★グリード下 真山仁
最後はアメリカ大統領まで巻き込んでビジネスを展開する・・こんなビジネスができたら感無量ですね。アメリカの象徴の白頭鷲とゴールデンイーグルことイヌワシとの対決は見ものでした。
常々感じる鷲津の凄さとは
1.人たらしの交渉術で常に主導権を握る
2.事前の情報収集力
3.周りからの支援を得られるシナリオ作り
順番に見ていきます。
本編上巻で新聞記者の北村とのインタビューから始まりましたが、その中でもこれらの要素がふんだんに盛り込まれていました。一見回りくどい言い方にも思える言い回しは相手から本音を引き出すための巧みな話術だったのでしょう。本音を引き出した上で事前に情報収集していた北村の昔書いた記事を見せて脱帽させる。それはストラスバーグやかつての師、アルに対しても同じような対応をしていました。冴えない姿も作戦の内なのでしょう。
そしてこの2番こそがシナリオ作りの肝となります。元CIAのサムを始めとして世界中に協力者を持って内部や外部の調査が抜け目ないのは脱帽です。3にも絡んできますが、買収をする上で社内の協力も欠かせません。エジソン買収というポーズを演じながら、実は内部からトップを切り崩したり声を上げてもらったりしています。
そして大統領の協力を得られるほどのシナリオを用意していました。企業のことを本当に考えているからこそいったん潰して日本の銀行の支援を受ける方法がベストだと判断し、それがアメリカにとってもベストでした。それでなおかつ巨万の利益を得られるのだからこの喜びは計り知れないですね。この辺りはフィクションだからとも思えます。
リーマンショックの原因はアメリカ人の強欲(グリード)だったのではないか、その根本的な考え方が変わらない限りまた同じ過ちを繰り返すのでしょう。元頭取の飯島がこの時とばかりにアメリカへの復讐心を燃やしていたところも、日本人としてすっきりとした読後感でした。