社労士と行政書士のダブル受験体験記

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★★★★トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 若松義人

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トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 若松義人

トヨタが「現場」でずっとくり返してきた言葉 若松義人

PHPビジネス文庫 2013年7月第1刷発行

 

大変勉強になりましたので、内容を抜粋して紹介します。

 

p32 想いを「見える化」せよ。

トヨタ式において「見える化」はとても大切なキーワードの一つである。

 工場では、生産は計画通りに進んでいるのか、遅れているとすればどのくらいの遅れがあるのかが、パッと見ただけでわからなければならない。不良品をはじめとする問題が起きれば、すぐにみんなに見えるようにする必要がある。

 「見える化」は工場だけで使うものではない。働いている人の能力は「星取表」によって見えるようにするし、プロフェクトの進行状況などもみんなに見えなければならない。

 

p36 工場に飯を食わせてもらっていることを忘れるな。

 何か問題が起こると管理部門の人が生産現場の人を呼びつける企業があった。その企業の再建を任されたAさんは、こうした体質にこそ赤字の原因があると感じ、朝夕二回、工場に足を運び、みんなに「おはよう」「こんにちは」と声をかけて歩くことを日課にした。

 それまで同社のトップでそんなことをした人はいなかった。それだけに最初は生産現場の人も管理部門の人も面食らったが、徐々に現場の人がAさんに直接提案をすることも増え、それを見ていた管理部門の役職者も時折工場へと顔を出すようになった。

 

p50 教えるときに、「わかったか?」と聞いてはいけない。

 本当の「わかりました」は、単なる言葉ではなく実行することだ。部下に限らず、相手や現場の行動が変わったのを見届けてはじめて「わかりました」「納得しました」は意味をもつ。トヨタ式の「わかった」は実行することであり、それは「わかったか?」と聞くのではなく、結果を見届けて確かめるべきものなのだ。

 

p64 モノをつくる前に人をつくれ。

 企業が成長をするうえでのネックは何かと言えば、やはり人になる。設備やお金は何とかなったとしても、成長を上回るスピードで人を育てるのはとても難しい。人づくりが追いつかなければ、どんな企業も成長にストップがかかるだけでなく、いずれ大きな壁にぶつかることになる。「モノをつくる前に人をつくる」はトヨタに限らず、すべての企業にとって決して忘れてはならないテーマなのである。

 

p90 バッドニュースファースト。

「玉ねぎの皮をむかずに泥つきのままもってこい」という言い方がある。玉ねぎとは「情報」のことだ。皮もむかず、泥つきのままもってきてくれれば、経営者は正しい判断ができる。だが、泥を落とし、皮を丁寧にむいてもってこられると誤った判断をしてしまう。

 改善をするためには、「問題をみんなに見えるようにする」ことが大切だ。以上やトラブル、問題や悪いニュースがみんなに見えるからこそ、みんなで知恵を出し、改善をすることができる。見えなければ知恵の出しようがない。

 

p94 二階級上の立場で考えろ。

 仕事は、「二階級上の立場で考えろ」がトヨタの考え方だ。役職のない若手社員であっても自分のことだけではなく、「主任なら」「係長なら」と上の立場でものを考える。「自分だけ」「自分の部署だけ」の仕事は、ときに全体の能率を下げることになる。

 仕事は、常に全体を見る目をもって取り組む必要があるということだ。

 

p100 自分の仕事が不要になるほどの改善をしろ。

 機械の調整を難しくしているのはその「職人」であり、あえて難しいままにしておくことで「俺にしかできない」と威張っていた。トヨタ式の改善を進めた結果、「誰にでも」「簡単に」できるものになった。倉庫も「俺にしかわからない」のは整理整頓ができていないからで、トヨタ式の5Sを進めると新入社員でさえ部品や部材の用意がたやすくできるようになった。トヨタ式改善の基本は「難しいことを易しくする」ことだ。

 

p102 「辛い」「しんどい」と感じたら、「どうすれば楽になれるか」考えよ。

 「辛い」とか「しんどい」は普通は愚痴である。頭ごなしに「我慢しろ」「慣れれば平気だ」と押しこめがちだが、これでは不満やわだかまりが生まれる。仕事は辛く、しんどいものになる。そうならないようにトヨタ「辛い」とか「しんどい」と感じたら、その原因を考え、「何とか楽にやれる方法はないか」と考えるようにアドバイスをした。

 改善のアイデアは身近なところにある。不平、不満でさえ改善のチャンスに変えていくところに、トヨタの改善が定着し、今も続く大きな理由がある。

 

 

p106 改善には変えていいものと変えてはいけないものがある。

 改善とは「変える」ことではあるが、これは絶対に守らなければならないというものをしっかりと見極めることが必要になる。たとえば、トヨタ式の生産現場には、「品質と安全はすべてに優先する」という言い方がある。コストを下げるために、品質の低下を招くとか、安全が犠牲になるような改善は本当の改善ではないということだ。

 

p114 最大の報酬はお金ではなく「聞く」こと。

 「改善提案の最大の報酬はお金ではなく、聞いてあげることです。お金を渡すよりも、心を大切にする。やりがいや感動を用意することが大切です」

 優れた改善提案の発表はすべて現場で行われる。現場に社長や役員が足を運び、現物を見ながら社員の発表を聞く。そのうえで賞を贈り、「こうしたらもっと良くなるね」とアドバイスをする。社員の心に、やりがいが生まれ、感動が生まれる。

 

p124 風土となるまで、習慣となるまでやり続ける。

 トヨタという会社の特徴の一つは、「いいと思ったらやり続ける」ことである。フォードに学んだ提案制度や創意くふう運動は改善を重ねながら60年以上に渡って続けている。

 改善活動で大切なのは「風土や習慣になるまでやり続ける」ことだ。改善を続けていれば、変えることが当たり前になり、日常になる。止めてしまえばあっという間に元に戻る。改善に限らず、「いい」と思ったら風土や習慣になるまでやり続ける。その積み重ねがやがて大きな変化をもたらすことになる。

 

p152 修繕と修理は違う。

 壊れた個所を見つけて、とりあえず直して動くようにする→修繕

 壊れた真因を見つけて再び同じような故障が起きないようにする→修理

(例)

ある病院で患者さんの待ち時間がとても長いという問題を抱えていた。

待合室にマッサージチェアを数台入れ、さらに雑誌や新聞、本、セルフサービスで飲み物を用意し退屈せずに待てるようにした → 修繕

事務スペースの整理整頓やカルテを「かんばん」代わりにしてスムーズな流れをつくることで待ち時間を大幅に短縮した → 修理

 

 

 

p158 なぜ見つからないのか?答えは簡単だ。見つかるまで捜していないのだ。

 トヨタ式を代表する言葉に「なぜを五回くり返せ」がある。問題が見つかったとき、パッと見てわかる「原因」ではなく、その奥にある「真因」を見つけ出して改善を行ってこそ問題を根っこから取り除くことができる。そのためには、「なぜ」「なぜ」「なぜ」と何度も「なぜ」をくり返して考え抜かなければならない、というのがトヨタの考え方だ。

 

p168 「責任追及」より「原因追及」を。

 何か問題が起きたときに、「誰の責任だ」という責任追及ばかりが先に立つと、人も問題を隠すようになる。責任を明確にすることもときに必要だが、より大切なのは「なぜ問題が起きたのか」という原因をしっかりと追求し、二度と問題が起こらない再発防止策を講じることである。

 人間がやる以上、ミスはつきものである。機械だって手入れを怠れば問題が起こる。大切なのはミスをした人を責めるのではなく、「ミスをしたくてもできないほどの改善」をすることだ。トヨタ式は責任追及よりも原因追及を優先して対策を講じるのである。

 

p172 「決められたことを守る」を「決めたことを守る」へ。

 完璧どころか、最初は少し「甘い」くらいでいい、というのがトヨタ式の考え方だ。少し甘ければ、働いている人たちが知恵を出せるし、改善もできる。そうやって少しずつ改善しながら、より良いものにしていくのが標準作業の本来の姿である。こうした過程を通して「決められたことを守る」は「決めたことを守る」へ変化していく。

「決められたことを守る」と言うと、なぜか反発を感じる人も多い。だとすれば、自分で問題に気づいて、自分で改善すればいい。そうすれば「決められた」は「自分で決めた」になり、自分で決めたことは守るのが当然となる。

 

p174 間違った規則は変えなくてはならない。

 「間違った規則は変えなくてはならない」というのがトヨタの考え方だ。決められた規則を勝手に破っていいということではない。決められた規則は守るが、そのときに「おかしい」「間違っている」と思ったなら、その規則の「目的は何か」「大切なことは何か」を考えることが大事になる。そして、規則をより良い規則に変えるように動く。

 

 

p186 百聞は一見にしかず、百見は一行(行動)にしかず。

 トヨタ式を導入したある企業の経営者がこんなことをいっていた。

「人から教えてもらっただけでは弱い。一つ一つ自分の力で実行していったものは強い。まずはやってみることです

 

p194 「がんばる」のではなく、みんなが「がんばらなくてもいい」ようにくふうせよ。

 一人の社員を指差した。見ると、その社員は思いエンジンブロックを持ち上げようとしていた。汗をかきながらの大仕事だ。リーダーが思わず「がんばっているなあ」と口にすると、上司は「なぜあんなことをしているんだ?見てこい」と指示した。聞くとローラーコンベアーの調子が悪く、仕方なしに手で持ち上げていた。

 リーダーにとって大切なのは、自分や部下が汗を多くかくことではなく、みんながどれだけ楽に仕事ができるかだ。見るべき点も「時間の長さ」や「汗の多さ」ではない。部下の「働き」だ。部下の「働き」を最大化することがリーダーの仕事なのである。

 

p206 当たり前のことを当たり前に。

 トヨタ式の多くは奇策ではない。考えてみれば当たり前のことばかりだが、トヨタの凄さはそうした当たり前のことをきっちり習慣としてぬかりなくやるところにある。

 スポーツもビジネスも基礎基本のないところに発展はない。強さとは当たり前のことを決しえ飽きることなくどれだけ徹底してやり続けられるかで決まるのである。

 

p214 一にユーザー、二にディーラー、三にメーカー。

 正式には「一に需要家、二に販売店、三に製造者」だが、この言葉の背景にあるのは、自動車は改良なくしては成立しえず、ユーザーの体験や声を元に、改善に次ぐ改善を重ねてこそ売れる車ができるし、自動車産業の発展もあるという考え方だ。メーカーはとかく「いいモノをつくれば売れる」となりがちだが、トヨタは「ユーザーのために車をつくり、ユーザーの声を生かしてこそいい車、売れる車がつくれる」と考える。改善はお客さまのためにある。改善はお客さまに近いところからやる。トヨタ式の基本は常に「お客さま」なのである。

 

 

 

p222 運を迎え入れる準備を怠るな。

 スポーツの世界には、「努力しながら祈れ」という言い方があるが、ビジネスの世界でも日頃の準備、努力を怠らない企業や個人のところにはじめて幸運は訪れるのである。

 

p228 日本のモノづくりと雇用を守る。

社員を辞めさせるのならトップは腹を切れ、というのが奥田碩氏の持論だった。だからこそ、アメリカの格付け会社が「終身雇用」を理由にトヨタの格付けを下げるといった際に、猛烈に反対している。人を育てるのには時間がかかる。安易に人を辞めさせていては決して「知恵を出して働く人」は育たない。「トヨタは人を大切にする」という信頼があってはじめてトヨタは強さを維持できるのである。

 こうした思いは現社長の豊田章男氏にも強烈に受け継がれている。「日本のモノづくりと雇用を守る」と明言しているが、今の時代、それは決してたやすいことではない。章男氏によると、もし100万台の生産を海外に移すと、日本国内では22万人の雇用が失われるという。トヨタには、創業以来一貫して「日本人の頭と腕」にこだわり続けた歴史がある。企業には「時の風潮」に安易に流されない強い志が欠かせないのである。